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VJ and Lighting | 立体的な空間の作り方2- 屋内プロジェクションマッピングの場合

皆さんこんにちは、VJyouです。
前回はクラブなどのイベントスペースでの空間の作り方でしたが、今回は商業施設での常設プロジェクションマッピングコンテンツなどの、ある程度周囲の環境光がある状態でのコンテンツの作り方の考え方をまとめてみました。

ルーブル美術館のニケ像はライティングが面白い


まず前提条件として、普通の屋内は暗いのです。

写真やビデオ撮影を仕事にしている人でないとあまり気づかないですが、屋内って実は暗いんです。

屋内=暗い 

と言われても、多くの人がピンと来ないと思いますが、私たちが日常生活でオフィスや商業施設で暗いと感じないのは、蛍光灯やledライトが煌々と輝いているからなのです。まさに21世紀の文明の成果ですね。
この膨大な量の天井ライトは普段の生活にはとても嬉しいのですが、いざプロジェクションマッピングをやろうとすると、広範囲を照らす天井ライトは天敵そのものです。

なので、常設プロジェクションマッピングを行う場合は

どれだけ施設常設の照明を消せるか


が空間づくりの肝になってきます。
実際の現場では、技術的な問題よりも、

照明を消す権限をどうやって手に入れるか

の政治力の問題の方が多々発生するので、日ごろの人間関係の成果が問われる瞬間でもあります。
大概の場合、館と直接話すのは代理店の方なので、代理店の人が館にプレゼンしやすくなる資料作りが肝になります。


下の図はやや極端ですが、通常の商業施設の場合、結構細かく照明がついています。



前回の記事はプロジェクションマッピングの光で空間を埋めている中で、どう照明でステージや演者を浮かび上がらせるかという話でしたが、今回は真逆の考え方になります。
常設の光が会場全体を埋めている中で、どうやって暗い場所をつくり、どうやって暗くなったエリアにプロジェクターの光をピンポイントで当てるか!というのが肝になります。
そこで今回は、


  1. マッピングをするオブジェの真上のライトだけを消す場合
  2. エリア全体のライトを消して、照明を持ち込む場合


の2通りに分けて説明しようと思います。



1.オブジェの真上のライトだけを消す





商業施設の場合、通行人の安全など諸々注意事項があるので、基本的にはマッピングする場所以外はなるべく明るくしないといけません。

そこで、マッピングの的の真上の電気は消しますが、真上以外のライトは、角度を変えるなどして微調整することになります。

下のビデオは、自分が主に映像制作で参加した銀座 東急百貨店の、ヒンカリンカのニケ像です。
例えばこの案件の場合は、なるべくニケ像の真上にあたるライトを消すだけに抑える事で、ニケ像のあるエリア以外の光量を保っています。


Hinka Rinka ニケ
Creative Director : Mari Asada
Project Support : VJyou



また、ビデオ後半の植物に覆われているニケ像の場合は、床面に投影する用にライトを抜いた結果、マッピングしないオブジェが暗くなりすぎていたので、光の範囲の狭いスポットライトを足しています。
空間に馴染ます光の場合は、舞台用の照明だと光が硬すぎるのでアパレル用の照明や博物館用の照明を主に使います。
空間に馴染む柔らかいスポットは、上手い人ほど自然に馴染ますので、そもそもスポットがあたってることすら気づかなくなるものです。

普段は目立たないけど、居なくなった瞬間に有り難みに気づく人間関係ってよくありますよね。
人間関係の場合は気づいた頃には手遅れですが、プロジェクションマッピングにはリハーサルがあるので安心して下さい。
リハーサルをやってみて何か物足りないなと思ったら、足したり引いたり、色々試行錯誤してみましょう。


余談ですが、本家ルーブルで展示されているサモトラケのニケのライティングは、日本ではまずお目にかかれない豪華なアンビエント光でした。

下の写真はVRカメラのスクリーンショットなのでパースが極端にかかっていますが、ニケ像のためだけに6つも光源が用意されているのが分かります。





通常の天高では実現できない、天から降り注ぐ大いなる光が再現されています。
かといって、CGのように全てに均一に光があたってるわけではないので、やはり自然な陰影が生まれ、彫刻の立体感を引き立てています。


なぜ本家ニケ像の話になるかと言うと、プロジェクションマッピングの大事な要素の一つに

影を再現する

という過程があるからです。

上でも述べているように、プロジェクションマッピングを行うためには、本来あるはずの光源を消して、代わりにプロジェクターから光をあてています。
しかし、本来の光源だったら存在するはずの影がプロジェクターでは発生しないので、周りの空間との違和感がうまれます。

そこでどうやって立体感を出しているかというと、わざわざ影をCGで再現して、影のあるはずの部分が黒くなっている映像を投影しているのです。

立体感のあるプロジェクションマッピングを製作するには高輝度なプロジェクターや環境光の調整も勿論大事ですが、リアリティのある影を描画することも同じぐらい大事になってきます。
うっかり影の向きが不揃いだったり、施設の他の光源と揃ってないと、なんだかチグハグな感じの空間になってしまいます。


上手な3DCGを作れるようになるには手書きのデッサンを練習するのが良いと言われるように、プロジェクションマッピングのようにデジタルな世界とアナログの世界の両方を繋ぐMix Realityのコンテンツを作る場合は、常日頃からアナログなスキルも伸ばしていくのが大事です。

屋内プロジェクションマッピングの場合は、マッピング用に抜いた天井ライトの影を再現したり、周囲の環境と馴染ます為に角度の狭いライトを足したりしないといけないので、どうしても建築家に近い目線でライティングもしないといけません。

そんな時に役立つのが、実際に色んな建物を訪れた際に体験した光の感覚です。
VJやってる人はノマド気質な人が多いと思うので、色々世界を旅する際、その場所ごとの光の感覚を覚えておくとマッピングの際に役に立ちます。


2.エリア全体のライトを消し、代わりに照明を持ち込む

ある程度以上大きいオブジェにマッピングするようになると、オブジェの上のライトを消していくと、ほぼフロア全体の照明を消さないといけなくなる場合があります。

そんな場合は、照明機材を全部持ち込んでエリア照明を仮設で作ってしまうことでエリアの光量とマッピングの鮮明さの両立を図ります。



照明を全部持ち込む事で
・光の照射角度をコントロールすることができる
・時間帯によって光の量を調整できる

というように、演出側の要望に応じて融通の利いたプログラミングが可能になります。
表参道ヒルズのように最初からムービングライトが天井に常設されて光をプログラミングできる会場なら便利ですが、あまり演出を想定してない環境の場合、ムービングライト一式を持ち込むことになります。
ここまでくると、気分はフェスのステージ製作みたいなものです。

下のビデオは、自分もお手伝いをさせて頂いた2016年冬の大名古屋ビルヂングでのクリスマスプロジェクションマッピングの様子の一部ですが、かなり広範囲にブルーの光をムービングライトで作っているのが分かると思います。



大名古屋ビルヂング クリスマスプロジョクションマッピング
Creative Director : Mari Asada
Project Support : AtelierO
Lightieg: Unlight



大名古屋ビルヂングの場合は地下一階から地上2階までの3フロア吹き抜けだったのでかなり天高があり、どう頑張っても光の干渉が避けられなかったのでムービングライトでゾーニングをしつつ、時間帯によって照明の光量を調整しました。

光の角度と時間帯という2通りのゾーニングをすることで、商業施設に求められる光量と、プロジェクションに必要なオブジェ周りの暗さの両方を実現しました。

ムービングライトを入れるほどの予算が無い場合は、なるべく照射角度の狭いLEDライトを組み合わせる事で、床は明るいけどマッピングの光に干渉しないような空間作りをします。

ライトの種類によって光の幅が違う!という感覚は、照明に関わる仕事をやったことのある人でないとなかなか実感湧かないと思いますが、だからこそ専門性が活きる分野でもあります。
光が広がりすぎるとマッピングと干渉し、狭すぎると通行の安全を確保する光量が得られないので、その加減が毎度悩ましいところです。

名古屋の時は、本当は映像と照明を一台のマシンで連動させたかったのですが、配線の都合で、この際は照明と映像のそれぞれの送出機の内部クロックでタイミングをあわせました。

イベント時のマッピングはオペレーターがつくのでシステムの自動化はいらないのですが、施設向けの常設案件の場合、基本的に無人で何週間も稼働し続けないといけません。 
自動化前提のシステムには普段のVJとは別のノウハウが必要になってきますので、システム設計に慣れてない人の場合は、必ず実績あるチームに相談しましょう。
自分も商業施設系の案件だと、レーベル経由で色んな人に助けて貰ってます。


余談ですが、プロジェクションマッピング用のオブジェを新規で作る場合、映像が当たっていない時はただの真っ白いオブジェになるのが問題になる事がしばしばあります。
そんな場合は、映像を当てない間は照明で演出するという逃げ方は結構色んな場所で使えるので、会場側への説明責任で困る人は是非試してみてください。
要は、真っ白いオブジェがドーンと鎮座してるからかっこ悪いのであって、ある程度色がついてると案外ごまかせるものです。



いかがでしたでしょうか。プロジェクションマッピングと言うと、コンテンツの中身のCG部分が注目されがちですが、施設内で常設になると、環境光をどう調整するか、周囲の通行の安全を担保できるか、毎日自動でシャットダウンと再起動できるかなど、普段のCG製作とは違ったノウハウが必要になってきます。

商業施設ではいろんなところで妥協や調整が必要になるので、マッピングエリアと通常エリアの境界線を感じさせない、空間に馴染ませる光の作り方が大事だと思います。

テレビの枠の中での映像コンテンツを作る製作会社は数多く存在しますが、空間全体の中で映像の映え方を熟知している人はまだまだ少数派であり、商業ベースのプロジェクションマッピングは、まだまだこれからの分野だと思います。

その一方で、VJの場合は常日頃のクラブやフェスでの試行錯誤の中で、光の質感の違いや照明とプロジェクションの重なり方に対する経験値が自然と備わっているので、どういう演出だったら実現できるかが感覚的に分かっている人が多いように思います。

普段のクラブでの経験が昼の世界での空間演出家としてのキャリアの土台になっている事に気づいていない人が結構いるように思うので、普段クラブで活躍してる人は、自分のスキルの特殊性をもっとアピールしていけばいいのにと思います。

ちなみに、自分の所属レーベル AtelierOでは、マッピングの中身の制作だけでなく施工ディレクションや照明ディレクション、運営マニュアル制作を含めたトータルで対応していますので、興味のある方は気軽にお問い合わせ下さい。ちゃんと日本語スタッフもいます。



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